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HIV/AIDS(6) 友人V

 「類は友を呼ぶ」というが、私の友達にはユニークな人生を送っている人が多い。そんな友人たちの中でも傑出しているのは、何と言ってもアメリカ人のVだろう。

 ‘彼女’は50才を過ぎた現役の‘おかまちゃん’である。彼女のアメリカでの波乱万丈の人生は他人事として聞くと「ホントーかよ!?」と思うぐらい面白い。それを語りだしたら、一冊や二冊の本ではすまないだろう。いま自伝を執筆中とのことなので、その出版を楽しみにしたい。

 彼女のユニークさは生き方だけではなく、信念にも現れている。「生涯一フッカー」と公言しつつ、HIV予防キャンペーンのために孤軍奮闘している。男性、女性用のコンドームを役所やHIV予防関連のNGOから無料で手に入れ、夜の巷で働く男女に配っているのだ。この活動は1992年にニューヨークで始めたそうだ。当時は注射針も配っていたと言う。

 チェンマイでは県庁の福祉課で調達するという。あまりに頻繁に行くので、「高いから少ししか渡せない」と言われると、「なに言ってんのよ、感染者の面倒を見るほうが余程高くつくでしょ!」と一喝してくるらしい。ごもっともである。

 去年から今年にかけて行ったオーストラリアのHIV予防の取り組みを話してくれた。かの地の売春は決められたゾーンであればお目こぼしがあるようで、シドニーの歓楽街のキングスクロスに一年365日、毎夜シドニー病院の車が出、希望者にコンドームやペッサリー、注射針を配るそうである。合理的かつ効果的、これは西洋人の特質の良い例だろう。彼女がそのようにして貰った品々を山ほど持って帰ってきたのを見た。

 それを毎夜、「ロイクロ通り」、「ターペー門付近」、「ナイトバザール」といったチェンマイの歓楽街で配る。その付近の男女にとってVはもうお馴染みの人物なので、あっという間にその日の手持ち分がなくなるらしい(みなさん、ぜひ実際に使ってくださいよ)。

 「なぜその活動を始めたの?」と聞くと、「自分は奇跡的に感染しなかったけど、友人たちがたくさん亡くなってしまったから」と答えた。

 過去アメリカを始め、感染者の出た国で間違ったHIV予防キャンペーンが行われたために「HIV=ゲイ、売春」というイメージが人々の心に植えつけられたのは事実である。そのため感染者全体が、いわれのない偏見に苦しめられた経緯がある。

 これを書いている張本人の私も「主人が浮気をしたために、、、」と言ったり、書いたりする意識の中に彼らの存在があるのを否定できない。しかし実際には‘どのような性的関係’でも可能性があるということは認識しておかなければならない。

 私はここで売買春の是非について論じるつもりはない。ただ言えるのはVが経験をもとに、自らの分野で出来る形で予防キャンペーンに力を注いでいることは適切で懸命なことであると思うということだけ。今後ともお互いに情報交換をし合ってエイズ予防キャンペーンを続けたいと思う。
by karihaha | 2005-03-17 03:52 | HIV・AIDS | Comments(0)
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