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隣人

ここチェンマイはタイの北部に位置しています。さらに北へ250kmほど行くとビルマとの国境メーサイに到着します。

メーサイはいまの仕事に就く前に何度となく『ビザラン』をしたところです。チェンマイから日帰りで1ヶ月のビザを更新しに行くこのメーサイ詣ではいまでもほろ苦い思い出です。このブログのその当時の記事には『デンをしに行く』と書いていました。

タイ側で出国のスタンプをもらったあとは、国境の川に架かる橋を渡ってビルマ側に行き、入出国のスタンプを押してもらうと、その足でタイ側に戻り入国スタンプを貰う。これで1ヶ月の滞在が許可されるのです。ただそれだけのためにバスに片道5時間近く揺られての往復です。

おかげさまでいまの仕事を始めてからは『メーサイ詣で』の必要はなくなりました。財団がビザと労働許可書の手配をしてくれるからです。まさしく雲泥の違いです。

もう一生分行ったと思えるメーサイ。でも最近また行きたくなってきました。橋を越えすぐこちらに戻ってくるのではなく、もっと遠くに足を伸ばしてみたい。


そう思わせたのは最近出会ったシャン州からのタイヤイ族の子ども達です。チェンマイにはビルマからの移住者(一部は難民と呼ばれています)が大勢暮らしています。国境を接しているということで往来が自由だった昔からの移民を含めタイ全土では100万人とも言われるこの人たちの殆どが正式なペーパーを持たない滞在者で、いくら労働条件・居住環境が悪くても「こちらの方が良い」と、タイを終の棲家にしようとしています。

さて、メーサイと国境を接するビルマ側のタチレクはそのシャン州というビルマで一番大きな旧藩主国です。歴史的には現在の専制族であるビルマ族との長い闘いがあり、現在もビルマ語とは違う独自の言語と文化を守っています。


シャン州ではタイヤイ族を始めとする様々な民族が住んでいますが、そのタイヤイ族の移住者の多くが地の利のあるここチェンマイに住み、そのうち学齢期の子弟の数は1万人とも言われています。

そんな子ども達のために近年になって政府管掌の幼稚園が設立されました。そこでは最近移住してきたばかりの3歳から12歳ぐらいまでの子ども100人あまりがタイ語の基本教育を受ける機会を得ています。それまではこの部門は数あるNGOの独壇場でしたから、政府が本腰を入れて難民教育に取り組みだしたのは画期的なことと言えるでしょう。

タイもUNICEF加盟国ですから、どのような理由で滞在していようと、教育を受ける自由と権利は認めらるということを政府ベースで実践し出した訳です。

彼らは故郷を離れ親に連れられて来たここチェンマイで、新しい言葉を覚え文化を学び好むと好まざるとにかかわらずタイに同化しようとしている子ども達です。国籍は勿論のこと社会福祉を始め何の保証も無い国でこれから生きようとしている子ども達。 そんな彼らをもっと知ってみたい気持ちになります。


例えばFの母親もタイヤイ族です。いまはイサン地方の刑務所にいる彼女がどんな場所から来たのか、なぜ故郷を捨てねばならなかったのか、どんな大きな力がそこに働いたのか。そしてなぜ罪を犯すようなことになってしまったのか。それを知るのは国境の街を通り抜け、内陸部の彼らの故郷を訪ねるのが最短距離のような気がします。
by karihaha | 2009-09-01 23:49 | ブログ | Comments(0)
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