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「海外=金持ち=幸せ」?

 ジョンがアームの面倒を看ているという事実。このことがVホームに知れることになり、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしているようだ。

 バレないように、細心の注意を払っていたつもりが、思わぬところから公になってしまった。

 クワンとアームの保母候補だった人物の姉が、病院で看護助手として働いている。その姉が、夜の付き添いに来たVホームの保母に話してしまったらしい。

 「天網恢恢…」。

 
 今日付き添い当番の保母の疑問は、どうしてアームの母親とジョンが知りあったかということ。

 アームが入院中に事情を聞いたという事実に基づいたきっかけを、多少のフィクションを交えて説明する。友人の一人、Vホームの保母が仲介役をしたなどとは、口が裂けても言えない。


 アームの母親が出産前の期間を、駆け込み寺のような家で過ごしたということを初めて知った。その施設は、児童養護施設の敷地内にあり、世間をはばかる出産をする母親たちのシェルターとして提供されている。

 妊婦たちがN県立病院で出産後は、大半の赤ん坊はすぐにVホームに預けられ、母親たちは、妊娠・出産前の生活に戻っていく。


 その施設の方針で、生後3ヶ月までに引き取るか、養子縁組に出すか決めなければならないらしい。

 アームの母親の場合は、ズルズルと結論を先延ばしにしていたため、その3ヶ月という期間も過ぎてしまい、強硬手段で養子縁組の手続きが始められていたというわけだ。

 大学を卒業するまでは自分の母親に預け、働き出せば自分が育てるという口実で奪い返してきたのは、「嘘も方便」の類に属するだろう。


 驚いたのは、この話題を持ち出した保母の、母親に向けた怒りが、養子縁組をしなかったという点にあったことだった。

 未婚の母で責任を持って育てられるのか、それなら海外に養子に行き、‘幸せ’に暮らすほうが良いではないか、という論法だった。

 「海外=金持ち=幸せ」

 この図式は広く一般のタイ人に浸透している考え方のように思う。


 多分に幻想に縛られている感のあるその概念も、出稼ぎ・結婚というような人生の選択肢の場合にはことさらに異を唱えるつもりはないが、親子関係は全く別の次元のもの。

 子どもを何としてでもわが手で育てたい、という母親から奪ってでも養子縁組を成立させるなどは論外だと思う。

 子どもの将来にとっても、貧しくても必死で育ててくれる実の母親や親戚との生活が自然な場所のはずだ。


 アームもまだまだ、今後どうなるか分からない。でも将来彼に会うことがあったら、「君のお母さんは、どうしても一緒に暮らしたいと頑張ったんだよ」そう伝えてあげたい。
by karihaha | 2005-07-03 10:58 | ブログ | Comments(0)
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