今日はテンの手術日。午後に予定されているその手術の前の時間、本人は預かり知らぬこととはいえ、少しでも側にいてやりたくて早い目に出かけることにした。
病棟に入ると、偶然テンが手術室に向かうところに出くわした。午前中に変更になったようだ。
手術にも希望の持てるものと、そうでないものがある。今回のはマイナス要因を除去する、つまり炎症を起こしたシャントを取り除くためという、気の重くなるような原因のため、手術室の前で待つ間も気持ちが沈む。
付き添いは私だけ、おばに連絡しておいたのに姿を現さない。
手術室から時折泣き声が聞こえる。
『お腹がすいた。オシメが濡れている。眠い。少し熱がある。お腹が痛い』
そんな、赤ん坊のコミュニケーション方法の一つ、「泣く」という行為。
彼女の場合は、それ以外に、
『痛い、息が出来ない、のどがからから』と泣く。
妊娠中絶を試みた母親のせいで、1.1kgの未熟児出生のあと、生後3ヶ月間を集中治療室で過ごす。
生後7ヶ月目の彼女はすでに4回の頭部手術を経験し、手術前の絶食、呼吸停止、毎日の注射と薬という日々を重ねている。
手術が終わり、病棟に戻ってきたテンは目をパッチリ開けていた。
つらい試練を耐えているそんなテンに私が出来ることは、そばにいてぎゅっと抱きしめてあげることだけ。