頭のガーゼ布団みたい… ↓
セームの病棟の前で鉢合わせしそうになった女性は、N県立病院のICUや病棟でよく見かけていた人だった。お互いに、「アー」と言ったまま、立ち尽くす。 その間に、私の方は、「この近辺の出身だったんだ」と了解するが、彼女は、なぜ私とジョムトンくんだりで出会うのか、理解できなかっただろう。 県立病院では遠くで見かけるだけで、話したこともなかったが、こんな場所で再会するのも何かの縁を感じる。 彼女の4才の次男は、突然の脳性の炎症で昏睡状態に陥り、回復した今も植物人間状態が続いている。その彼を抱きながら、問わず語りしてくれた話も、北タイではあまりにも‘ありふれた’というべき内容だった。 最初の結婚をした相手がHIVに感染し、そして自分も。ひいては長男(9才)にも感染が広がってしまった。 主人は亡くなり、再婚をしたが、そのときに生まれた子どもは母子感染防止のための妊娠・出産中の手当てが効を奏し陰性が確認され、喜んでいた矢先に今回の病気。長男は、知的面にも問題があり、就学できていないそうだ。 淡々とそう話す彼女からは、そんな不幸を背負っているとは思えないほどの、落ち着きと逞しさを感じた。 「あるがままの現状を受け入れる」 彼女は意図していないかもしれないが、そんな凛とした清々しささえ感じられた。 セームは、人の優しさに敏感な子どもだと思っている。この女性に会った日から「メー(お母さん)」と呼び、甘えているそうだ。 セームの頭部や、身体の傷について聞かれた。この人なら本当のことを言える。語り終わったあと、「それなら施設に行くほうがいいよ」と言ってくれた。 自身のご近所にも、父親が他界し、母親はHIVが進行し盲目という家庭に4才の感染児がいるらしく、その母親の相談にのってあげてくれないかと言われた。 ラムヤイの木が茂るこの地域の人々の、一見平和で穏やかな生活に、HIVが根深くその影を落としているのを肌で感じる。
by karihaha
| 2005-07-21 04:04
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