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足長おじさんとピム

 チェンライからメーサイに向かう途中にメーチャンと呼ばれる街がある。そこを左に折れ、山の中に入っていくと、山岳民族アカ族の集落が点在する地域になる。

 どの山岳民族の村でも感じることだが、日本の昔の村はこうだったのではと思わせられる村々の小道には、「ガキ大将ここにあり!」という雰囲気の子どもたちがそこかしこで見かけれる。

 いまでは懐かしくさえ思えるそんな子たちが走り回り、その側では明日は食料になってしまうかもしれない鶏がえさをついばんでいる。

 
 この村を訪れた目的は、あるNGOが‘目に付けた’女児の親を説得するためで、私はたまたまそのお供をしたのだった。

 そのアカ族の少女ピムは6歳。訪れたときは昼寝の最中で、その側で彼女の母親、おじ、母親の義理の弟とNGOのメンバーが話し合うことになった。

 話は家庭環境に問題を抱えた子どもたちのための施設が、新たに立ち上がったことに始まる。

 そこに「収容」する子ども探しの行脚の途中で、ピムと出会い、彼女に特別の才能を感じた代表が、その施設で行われる英才教育を通じて子どもを育てるプログラムに是非ピムを参加させたいと思ったのがきっかけだった。

 ピムには父は無く、母親もHIV感染者であり、薬物中毒患者。現在はピムとともに、実家で弟の世話になりながら暮らしており、他にも街に出ている姉妹が4人いると聞いていた。

 初めての出会い以来、代表の意向を汲んだ職員が何度も連絡し説得を続けているが、母親が頑として承知せず、来年からの就学は、山を降りた近所の村の小学校へ行かせると主張し続けていた。


 ピムのおじは学校の教師とのことで、彼や義理の弟がしきりと説得するが、母親は固い表情をくずさない。

 「費用はなにもかかりません。彼女はこんなに素晴らしい環境で、大勢のスタッフに囲まれて暮らします。大学にも行かせます。お母さんやお姉さんが来たいときに遊びに来てください」

 職員も必死で説明を続けている。

 ピムにとっては、まさにおとぎ話に出てくるような、「足長おじさん」の出現、おそらく一生一度の‘チャンス’だろう。もし実現したら、彼女には別の人生が開けている。
 
 そんな、他人にとっては、とてつもなく「おいしい話」。それを母親は、「遠すぎる」の一言で拒み続けている。


 眠っていたピムが目をさました。普段は機嫌の良い子だというが、グズって母親の胸に顔をうずめたまま、こちらをみようともしない。何かおかしな雰囲気でも感じとっているのだろうか。

 私には分からない。彼女を母親から離すことが是なのか、今のままの生活を続けることが自然なのか。
by karihaha | 2005-09-05 11:44 | ブログ | Comments(0)
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