ビー、5才は母親を生まれてすぐに亡くした。父親は幼い娘を省みることもなく家を出、生き別れとなった。ビーを育てた祖父母は明日の生活にもことかくような生活をしていた。
そんなある日、ビーの住む貧しい村に一人の外国人があらわれ、ビーを引き取ると言った。「18歳までちゃんと教育をしてあげるよ」と。 今の生活ではビーにまともな教育をつけるなど思いもよらなかった祖父母は、寂しさをこらえて送り出すことにした。 新しい生活はビーにとっては別世界に連れ込まれたようなものだった。藁葺きの家に取って代わったのは新築間もない家、豊富な食べ物、おもちゃ・映画・遠足などの娯楽にも事欠かなかった。でもビーは家が恋しかった。おじいちゃん、おばあちゃんが恋しかった。だからよく泣いた。他のどの子よりもよく泣いた。学校の先生や保母さんもあまり好きになれなかった。だから泣いた。 そして1ヶ月。祖母が急逝したというニュースが届いた。外国人は貧しい家族を思んばかり葬儀費を出した。車で10時間の距離も厭わずビーを葬儀に出席させた。運転手、保母が付き添って。村では‘幸運’なビーの話で持ちきりとなっただろう。 帰ってきたビーは、沈み込みがちな少女になった。そしてますます泣いた。30分も1時間も泣き続けた。扱いにくい子どもだという噂を漏れ聞くようになってきた。外国人やスタッフの厄介者になってきたのだった。 ビーは『醜いアヒルの子』になった。 『泣くのが子どもの仕事』。そんな風に、子どもの成長のプロセスとは捉えられなかった大人たちに囲まれていたことがビーの不運だった。 今日、ビーは故郷に帰った。迎えにきた祖父に連れられて。
by karihaha
| 2006-01-16 11:48
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