テンが笑った。声をあげて。
日本からの知人が持ってきてくださった、『吹き戻し』を吹いたときだった。「ピー」という音とともに、巻いていた紙が伸び、テンの顔にあたった。すると、顔がくずれたかと思うと、「フフフ」と。
去年8月下旬の、ここS病院での最初の手術のあとも、同じだった。あの手術のあとは2ヶ月間家にいることが出来たなー。すると、今回もそれぐらいは期待できるかも?
手術時に腕に入れた点滴の針だが、液漏れで夜にはすでに抜かれ、新たに太ももの付け根や、足の裏と十数回のトライの上、やっと頭の‘使える’血管に落ち着いた。
同行した知人が、「そんな時も麻酔はかかっていないの?」と聞いた。
日常的に‘執行’される‘拷問’だから、麻酔はおろか、消痛剤など使われるはずもない。
でも、テンは調子がいいと、すぐ笑顔を見せてくれる。日ごろ耐えている痛みを知っている私たちには、その笑顔・笑い声は宝石のように写る。