「ほっ」と。キャンペーン

タイの障害をもつ子どもたちの福祉 (1)

 去年、暮れも押しつまったころ、『障害者への偏見をなくすためのキャンペーンデー』という催しがチェンマイ近郊メーリム市にあるRajanakarindra Institute of Child Development, Chiangmai で行われた。

 当日は、厚生大臣の挨拶があったり、障害を持つ子どもたちのパレード、また障害者のための各種学校が設けたブースで展示が行われていたが、あとで聞いた『急ごしらえ』という言葉にたがわず、あまり目的が見えてこない催しではあった。

 それもきっかけになって調べだした、当地の障害を持つ児童の福祉事情をまとめたものを下記【more】続く、に掲載します。

 今回の記事への追加や訂正を含め、今後もこのテーマに関する記事を書いていくつもりですが、とりあえず中間報告ということでご理解ください。



 当地の障害者のための福祉は充分というには程遠いという印象があります。まず、金銭的な支援としては、障害者手帳を持っていれば、月500バーツ(1,500円)の手当てが出ますが、こちらで生活している感覚で言えば、『ないよりはあった方がいいかもしれないが…』という感がぬぐえません。この金額はHIV感染者のための補助金や老齢年金と同額となっています。

 健康管理面では、チェンマイ県に限って言えば、ナコーンピン県立病院やチェンマイ大学付属病院と言った、国公立の総合病院にリハビリテーションルームが設けられている他は、前述の 『Rajanagarindra:障害児のための身体的総合ケアセンター』があります。この施設は厚生省の管轄下に置かれています。残念ながらこの種の専門施設は、ここタイではRanakarindra一箇所だけとなっています。他にはチェンマイラム病院や、Mckean Rehabilitation Center等、私立の病院が数ヶ所、理学療法士・作業療法士を置いています。

 知的教育面では、同じくメーリム市に、【障害者教育センター、No.8】という文部省管轄下の役所があります。ここは障害を持った子どもたちのための各種教育機関の中心的存在です。保護者たちが学齢期に達した障害児の教育相談をしに来る施設です。チェンマイ県、ランプーン県を始め、北タイ8県を担当しています。

 下記は各関係機関の詳説です。


Rajanakarindra Institute of Child Development Chiangmai
196 Moo 10, Chiangmai-Fang Road, Tambon Donkaew, Amphur Maerim, Chiangmai
Tel: 053-890-23844
http://www.richd.go.th

知的障害児童、身体障害児童のための総合的ケアセンター。その活動内容は、1)医療行為と診断 2)身体的発達を促進 3)リハビリテーション 4)カウンセリング 5)知力テスト・セラピー 6)障害者のための教育相談(障害者教育センター No.8との協力で) 7)歯科治療 8)障害をもつ児童に対する地域社会の理解を深め、それら児童の社会参加の促進。

〔訪問記〕このセンターは、チェンマイ市から北10kmほどのナコーンピン県立病院の裏手にある。広い敷地に2棟の白い建物があり、内部は作業療法や理学療法が行われる部屋や診察室等に分かれている。ホールを始め、いたるところに子どもたちが退屈しないように滑り台や遊び場が設けられている。敷地には、広い運動場や、職員や患者のための宿舎が設けられている。

山岳部等の遠隔地から来た人たちが、一日を有効に使ってもらえるよう、施設で出される昼食は無料となっている。また、長期のリハビリや医療行為が必要なケースや、全国各地からの障害児や家族に対応するため宿泊施設も設けられている。


私が訪れたときには、脳性障害児をもつ親たちのためのクラスが開かれていた。日々の生活の中で親が障害児のために行うリハビリは大きな意味を持っている。本来ならば毎日習慣的にリハビリをしてこそ効果が期待できるのだが、保険を使ってこの施設に来ることができるのは、平均月1回。それ以外の訪問は1時間300バーツという高額な代金を払わなければならない。

そのため自宅での保護者によるリハビリが、障害児の症状緩和や成長に大きなカギを握っている。ちなみにRajanakarindraの一時間あたりの金額は、他の医療機関、例えば、公立のナコーンピン病院や、私立でミッション系のMckean Rehabilitation Centerの、1時間当たり150バーツより高く設定されている。

各種保険(30バーツ保険・社会保険・公務員保険)を持たない人々、主にタイの身分証明書を持たない山岳民族の子女はこの高額な費用を全額負担しなければならない。そのような人々を救済しようと、世界各地で様々なプロジェクトを展開しているNGOProject Hopeタイ事務所が費用を援助しているが、希望者の数が予算に追いつかず、広く寄付を募っている。

【注:Project Hope Thailandは、プロジェクトHopeジャパン傘下の現地事務所です】


Mckean Rehabilitatiion Center
68-69, 8 Padad, Muang Chiangmai 50000
Tel:053-817-170
チェンマイ市内中心部から南へおよそ8km、500ライ(1ライ=1,600㎡)の広大な敷地にあるこのセンターは1908年、クリスチャン団体が建てたタイで初めてのライ病患者のコロニーの中にある。現在ではライ病患者の減少とともに、発展的に障害者のためのリハビリや医療行為を専門的に行う病院として機能している。

【訪問記】ピン川沿いの広大な敷地は、徒歩で回るのは少しつらいかなという印象。センターを入ってすぐの受付では敷地内の各所を回るツアーのための地図を手にいれることができる。病院、作業所、果樹園、教会、ライ病患者のコロニー、老人用施設が点在し、一大コロニーという感が強い。

病院内のリハビリルームは広く、子どもに限らず、大人も通ってきている。理学療法ルーム、作業療法ルームで交通事故負傷者、脳性マヒ患者たちがリハビリに励んでいる。ちなみにクワンはこのセンターに週3日通っている。一時間当たりの訓練費は150バーツ。


障害者教育のためのセンター、No.8
No. 353, Moo 5, Khlongchon Purathaan Road, Tambon Donkaew, Amphur Maerim, Chiangmai 50180
Tel: 053-236-068

この施設もナコーンピン病院や、Rajanakarindraに近接している。センターの役割は前述した通り、障害児のための教育環境を整えて手配すること。当地にある国立盲学校、聾唖者学校、身体障害者のための学校、知的障害者のための学校およびNGOの施設がその傘下に入っている。

各学校の詳説は次回に譲るとして、さまざまな理由でこれら学校に通えない子どもたちのために、出張教授もしている。



 とここまで聞くと、「タイの障害児の対策はずいぶん充実している」という印象を持たれるかもしれませんが、Rajanakarindraのような施設がタイ全土でたったの一箇所。教育面については、実際にはWAFKA にあるように、タイの全児童の平均的就学率84%に対し、障害児の就学率は5.5%という驚くべき低率に終始していることを思えば、現状が少しはお分かりいただけるのではないでしょうか?

 では、残り95%の学校に通えない子どもたちはどうしているのか? 低所得層の子どもの場合、教育機会やリハビリの機会も与えられぬまま、家で過ごしているという図が見えてきます。これらの貧しい家庭の子どもたちは、一様にして両親が共働き、そして多くの場合出稼ぎをしているため、祖父母や親戚に養護を一任されているケースが多く、Rajanakarindraのような施設が行っている、CBR(Community Based Rehabilitation:地域に根ざしたリハビリテーション)活動も保護者の熱意の欠如、そして無知・無関心も相まって思うような成果は上がっていないということです。 厚生省や文部省が高く掲げている、『地域ケア』ですが、道は遠いというのが現状です。

 同時に5.5%という驚くべき低率の就学率の一因は、各種学校の絶対数の少なさも一因となっていると考えられます。タイ全土の障害者のための公立の各種学校は43校にすぎず、これは盲学校だけでも70を超える日本の現状とは比べるべくもありません。このように、障害児が置かれた厳しい社会的現状は、教育面でも如実にあらわれています。


★次回は、チェンマイ近郊の障害者のための各種学校をご紹介します。
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by karihaha | 2006-02-11 00:35 | 障害を持つ子どもたちの福祉 | Comments(0)
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