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カテゴリ:30バーツ健康保険制度( 5 )

家庭訪問

こちらの小・中・高校の大半が長い夏休みもあと1週間で終わり、いよいよ2016年度の新学期が始まろうとしています。いつもこの時期になると、特に新学期が始まると、奨学金関連で少しバタバタします。

Khwanは私の奨学金授与生の中では最年少で、今年は小学3年生です。過去2年間は授業料のみの支援でしたが、通う学校が公立小学校にしては金額的には高く、一応の基準としている小学生には年間5,000バーツをはるかに超えてしまいます。これは去年から新校長になってからの突然の値上げで、ことほど左様に『義務教育の無償化』などと言う政府のお題目は全くの幻という典型的な例になります。


ただ地方自治体に属する学校はその3分の1とか、郊外・山間部の学校の中には本当に無償というところもあり、一概には言えないというところです。


さて、Khwanの授業料に戻って、数日前に祖父から電話がありました。新学期が始まるのが5月16日からで、その前に払い込まねばならないと言って来たのです。3月末には保護者会があり、金額的なこと等はそのときに分かっている筈なのに、タイ人のそんな悠長さには慣れてはいても随分のんびりした話です。

「分かっているからその払込書を私の自宅まで持ってきて」と言うと、「忙しい」。私もカチンと来て、「16日に行けるかどうか検討してみる」と言って電話を切りました。

実は今までは新学期が始まると払込書を受け取りに学校まで行き、学校付近の銀行で振り込みを済ませたあと、再び銀行の領収書を持って学校に引き返すということをしていたのです。学校からは領収書は新学期の1日目に担任の先生に渡すように決められているのです。


父兄が私のところまで払込書を持ってくれば新学期が始まるまでに振込み、余裕を持って自宅なりに届けられるのにと、常々思っていたのですが、「さすがに少し意地悪だったかな、Khwanがやきもきしているだろうな、16日には行かなきゃな」と思っていた矢先、翌日になって再び電話が。今度は祖母で再度のプッシュでした。お尻に火がつき始めたころに慌てているようです。

「やれやれ」
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それなら普段は学校で子供にしか会っていないけど、久しぶりに家庭訪問をしてみるか、と暑い日中を避けて出かけることにしました。

Khwanの家はチェンマイ市の南に広がるスラム街の一角にあります。付近はかなり“香ばしい”匂いの小さなドブ川が流れ、山岳少数民族やタイ人が思い思いの掘っ立て小屋のような家を建てて暮らしています。

Khwan宅には現在祖父母と親戚や孫の9人住まいです。一家の大黒柱は60過ぎの祖父で、彼が生計を立てる下に5人の孫が同居し、そのうちの3人はKhwanを含めてまだ小学生です。

祖父に「仕事はうまく行っているの?」と聞くと、以前までやっていた警備の仕事は辞めてしまい、いまは廃品回収だけしているとのこと。「忙しい」と言っていたのは???

しかし廃品回収だけであれほどの大家族をどうして支えていけるのでしょう? 前回の訪問時に居たKhwanと1歳上の兄のHIV感染者の父親の姿を見かけないので聞くと、刑務所で服役中とか。 そしてこれも前回会った孫の1人、中学を中退した男の子は前回とは様子が打って変わり、一目見ただけで『薬物中毒』を疑わざるを得ません。


そんな状態で祖父母たちはどこまで持ちこたえられるのか? いずれは子供たちに新しい落ち着き先を見つけてあげないと、かもなー。


そんな状況の中の救いはKhwanと自治体の学校に通う兄が利発なこと。兄は以前から口達者でしたが、今回もKhwanの成績が少し落ちてしまったことを注意していると、「僕は2教科を除いて全部満点を取ったよ。でもKhwanの学校と違って先生はまともに教えてくれないし、簡単なんだけどね」と話してくれました。かなり現実が分かっています。2人(+いとこの1人)ともなにとぞこのまま素直に育ってくれますように。

「よーし、おばちゃん、とりあえずはあと2人分の奨学金も面倒見てしまおう!」
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by karihaha | 2016-05-08 22:19 | 30バーツ健康保険制度 | Comments(0)

30バーツ健康保険制度(5) ボナンザ

c0071527_4295267.jpg 週日であれば人が溢れているここN県立病院の待合室も、休日の今日は、外来患者もなく森閑としている。広い敷地の木陰で人の輪ができている。見舞い客なのか、ただ単に休みに来ているのか、食べ物を広げているグループが多い。

 この病院も他の公立病院のご多分に漏れず、3時間待ち、3分診療である。さらにひどいのはチェンマイ市内にあるチェンマイ大学医学部付属のS病院で、北タイで一番といわれるこの基幹病院に至っては、2日がかり3分診療、つまり一日8時間待っても診察してもらえず、翌日に繰り越されてしまうケースも多いという。

 しかしこれも30バーツ保険を使う場合であって、地獄の沙汰も金次第、普通の社会保険や、自由診療つまり全額私費となると事情が違う。S病院では、支払い形態により、3つの窓口があり、自己負担の多寡に反比例して待ち時間が短縮される。単純明快と言えば言えるシステムではある。

 30バーツ保険の被保険者が入院した場合、どのような治療を受けようがどれほど長期間入院しようが、一回につき30バーツ(90円)ぽっきりである。

 隣のベッドの親子連れに看護助手がお金を請求に来た。「30バーツです」といいながら、私に向かって「ほんとうに安いよね。ご飯一回分だよ」と言った。

 別に彼女がその差額を支払うわけでもないのだから、と思いつつ、患者にとってこのボナンザ(大もうけ)のような制度、タクシン首相はいつまで持ちこたえられるのかと心配になる。
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by karihaha | 2005-03-06 04:33 | 30バーツ健康保険制度 | Comments(0)

30バーツ健康保険制度(4) くわしく

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「30バーツ健康保険制度」が2002年2月より本格導入されましたが、これに先立ち、被保険者を対象とした制度の説明書が配布されました。

 今回、その説明書を入手しましたので、翻訳し掲載します。これでこの制度の概略がつかめるのではと思います。非常に平易な言葉で説明されていますので、ぜひご一読ください。

 それではまず、私がまとめた制度の概略です。当ブログで掲載済みの記事と重複する部分もありますが、ご参考まで。 ‘チェンマイ’  

                             

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by karihaha | 2005-03-04 21:13 | 30バーツ健康保険制度 | Comments(0)

30バーツ健康保険制度(2) 現場では

 タイの健康保険制度については既に少し説明した。そして基本的に孤児院の子供たちは、相応の治療も受けられるということも。しかし、そうかと言って安穏とばかりしていられない事情がある。

 タクシン新政権が政策の目玉として約4年前に打ち上げたこの健康保険制度、医者の間ではすこぶる評判が悪いと聞く。制度に伴い提出する書類が多くなった上、政府補助金と病院予算との板ばさみで、医者のモラルとしては納得の出来ない診療を強いられるケースが多いことが原因らしい。

 N県立病院の場合、まず外来で診察を受けるが、‘めでたく’入院を許可されるのは余程の重症の場合に限られる。大半が薬をもたされ自宅療養になる。しかし、入院したからといって安心してはいられない。K孤児院を始めとして、山岳民族や30バーツ保険制度の患者への病院の対応は、一言で言って、「出来るだけ早くお引取りいただく」に尽きる。

 勿論症状によって違うが、病因で一番多い下痢、肺炎の子どもで入院期間は平均3,4日というところだろうか。毎朝、10時ぐらいから主治医の回診があり、今後の治療方針や退院を決定していく。まだ熱があったり、下痢をしたりしていても、バサバサと切り捨てるように退院のご託宣がある。その場合は粛々と従うしか仕方がない。退院と決定した場合、地方病院からの転院者の場合は最初の病院に戻るケースが多い。これなどは例えが悪いが、‘ババ抜き’のようなものだろう。

 素人目から見ても「まだ、帰したら駄目でしょ」と思える子どもでも、早期退院が原因ですぐに病院に逆戻りというケースが数えるほどしかないのは、さすがプロというべきか。基本的治療がすめば、自然治癒力に任せる。そういうことなのかも知れない。
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by karihaha | 2005-03-04 20:46 | 30バーツ健康保険制度 | Comments(0)

30バーツ健康保険制度(1)

 タイでは社会保険以外に日本の国民健康保険のような制度として「30バーツ保険制度」がある。これは企業保険や任意保険のような健康保険に加入していない、低所得層や無職の人に対する保険制度である。被保険者は一病因あたり、30バーツ(約90円)の費用で治療を受けられる。

 タクシン政権下、およそ4年前鳴り物入りで始められたこのシステム、数々の制約がある。まず、治療を受ける病院が指定される。地域内の主に公立病院が対象となる。全てが戸籍本位のタイは、健康保険も例外ではなく、その県に戸籍を6年以上置いている人のみが対象だ。例えばチェンマイに戸籍を置いているが、バンコックで働いている場合はその対象ではない。

 その他にはタイ人の身分証明書を持っている人に限られる。山岳民族の人の中には、昔からこの地域に住んでいるが、身分証明書は持っていないというような人がいるが、そのような人はその対象とはならない。以上の制約に合致しない人はどうするか?実費を払うことになる。

 しかし、めでたく治療を受けられても、その内容は往々にして、赤チンと包帯あるいは、頭痛薬程度になることが多い。国から各地域の公立病院へは、被保険者一人あたり年間1,500バーツ(4,500円)あまりの補助金しか交付されず、この額も年々減少の傾向にあり、あとの費用は各病院でまかなうように、との現実では、担当する病院としてもこの保険では本当に必要な医療が施せないのは仕方が無いことかもしれない(下記2005年1月24日付’ネーションウイークエンド誌’‘記事参照)。
 
 山岳民族を始め、低所得層の人にはこれは生死に関わる問題だ。手術を受けようにも、お金が払えず治療を受けずに帰らざるを得なかった子供を何人も知っている。その親の無念の思いを考えると言葉もない。重病の子どもたちは結局死んでいくしか道は無いのだから。

 その点、K孤児院の子供たちは特例として、無条件である程度までの加療をしてもらえる。K孤児院から各種NGO施設やタイ国内の里親に引き取られた子供達もこの例に漏れず、軽い症状であれば近隣の公立病院へまず行き、症状が重ければN県立病院に来る。でもこれも孤児である代償と考えれば、幸運とは言っていられないだろう。



‘アムマーチー氏、30バーツ保険制度に300億バーツの追加予算必要’

 ‘国民皆健康保険制度’を旗頭とした、30バーツ保険制度に関し、公衆衛生研究所が「4年間で何を学び、今後どのように進めていくのか」と銘打った政策決定のベースとなる調査結果を発表した。

 アムマーチー氏は、現在政府が提示している一人当たり年間1,500バーツから1,600バーツの補助金では不足だとして、この制度の存続のためには、さらに300億バーツの追加予算計上が不可欠だと語った。これにより一人当たり年間2,000バーツとなる。この保険制度が各年齢層に利用されており、健康保険庁にとり、大きな問題となってきている。

30バーツ健康保険制度のシステムの不備により、起こっている問題としてはすでに相当数の医者がこの制度から脱退していることで、このことは社会的不安材料にもなりかねない。特に、2002年には前年比42%増で脱退したと報告している。しかしこれに対して政府筋は、毎年同時期に脱退者が出る傾向があると反論している。
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by karihaha | 2005-03-04 20:45 | 30バーツ健康保険制度 | Comments(0)