8ヶ月ぶりの「完全休日」明けの今日。所用を済ませたあと、久しぶりにVホームに行ってみた。Vホームは広大な敷地の一番奥、その手前に「ボーイズホーム」、「ガールズホーム」がある。
敷地の門をくぐるとすぐ、見慣れた男の子が走ってきた。腎臓病で月一回病院に輸血に来る8才の男児。 「5バーツ頂戴。お菓子買いたい」。 少し考えて、財布を出しかけた私に。 「10バーツ」。 「ダメ!5バーツだけ」。 そのまま歩いていくと、駐車場に何台も車が停められているのに気がついた。 「そうか。今日は休日か」。 この施設には、休日ともなるとタイ人の学生ボランティアが来て、一緒に活動をしたり、おやつを配ったりする。Vホームの家々に行く道すがら、ここでボランティアをしていたときに知り合った子どもや、病院で面倒を看た子どもと何人もすれ違う。 「どこかで見たことがあるぞ」、とでもいいたげな顔をしたまま通り過ぎる子ども。最初から小さな指をこちらに向けて、にこにこしている子ども。 今までもいろいろあったが、この子どもたちのいるお陰で、このホームはやっぱり私にとりチェンマイで一番大事な場所だ。 まず最初に、気になっていたガーンがいると思われる 「病気の子どもの家」に行ってみた。今日ここに来たのは、彼女とノックに会うのが主な目的だった。 網戸ごしに覗いた部屋に、見慣れた姿が。友人でもある保母Lだった。 Vホームの保母は毎月シフトで家の担当を変わる。Lの今月のシフトはここと、インファー(HIV感染児の家)の担当であったようだ。 家に入ると、とことこと急いで走ってくる小さな影。数日前まで入院していたレックだ。抱かれるのが大好き(タイ語ではティットムー=腕中毒という)で、さっそく胸に飛び込んできた。 他にもいるいる。見慣れた顔が。病院ご常連組が。 ビクタージュニアNo.1も‘生きて’いた。一番端っこのベービーベッドのその横には大きくて長い酸素のタンク。丁度準看護師がいたので早速聞きたかった事を質問。 「この酸素いくらぐらいするの?」。 「160バーツ(¥500)。大体2日で入れ替えないといけない」。 単純計算で月2,400バーツ。正規のパートさんの月給4千バーツ。 施設にきてからまだ一度も「息をし忘れていない」とのこと。やはり病棟は病原菌の巣窟で、不必要に長くいる場所ではない。 「今日は病院に行かないの?」とL。 「一昨日で全員退院したから」。 「昨夕またガーンが入ったよ」。 彼女はやっぱりまだ「病抜け」していないのか。でも病院はあとにして、折角来たのだから今日はどの家も回ってみよう。 次に向かったのはインファー(HIV感染児の家)。とはいっても全員が感染確定しているわけではなく、血液検査中の子どもやノックのような未熟児たちで、「病人の家」にいるほどでもない子がいる。 2階の子どもたちの居住区に行ってすぐ、ダムが目についた。いつもはニコニコしながら、「ヘーイ」と繰り返すのに、今日は部屋の隅っこでうつろな目をしている。「ダム、どうしたの」と言っていると、保母さんが「今日は熱があって、いま薬を飲ませたところ」と代わりに答えてくれた。 真ん中の居間のような空間を境に、両翼に分かれた部屋の右側が0才から1才までの新生児や乳児の部屋。ノックはコットに入れられていた。私を見て「ニコッ」。体重が1割ぐらいは増えたかもしれない。ミルクもしっかり飲んでいるし、もう大丈夫だろう。 隙間なく並列に置かれたベビーベッドおよそ12床。どのベッドにも子どもが横たわっていた。その大半が入院経験のある子ども。どの子も‘鼻くそ’をつけたまま。病棟にいる子どもはいつもピカピカにしているので、すぐにその差を感じる。 「スタ」がいつものはにかみ笑いをしながら私の顔を覗き見している。彼女が入院中に酔った実父が来て、「俺の子、俺の子」と言うので、警備員に来てもらったことを思い出す。スタは感染が確定している。 左翼は1才から3才ぐらいまでの感染確定している乳幼児の部屋。その部屋にもベビーベッドが置かれ、その中に入れられた子ども全員の目が私の動きを追っている。表現の仕方が適切でないのは承知の上で言うと、まるで動物園のサルのように。もう充分に歩けるのに、少なくとも日中だけでも自由に動き回らせてあげられないのか? 感染者同士ではあってもHIV菌の種類が違うので、より強い菌を持つ子どもと弱い菌の子どもの接触を極力さけるためなのか?それにしても、もっと別の形で一日を過ごさせてあげられるはず。10人あまりの人数なのだから、例えば自由に遊ばせながら3人ぐらいの保母が目を光らせておくとか。 何人かのオシメを換えたり、シャワーを浴びさせるために動き回ったりしていると、2才ぐらいの女の子が私の後ろをついてまわっているのに気がついた。 「この子は昨日入ってきてね」、と保母さん。 時には風呂場のタイルに寝そべってしまう。今日は暑い日なので気持ちがいいの? 「こっちにおいで」と言うと素直に従う。 Vホームに行くといつも感じること。この子どもたちの現在置かれている状況に比し、私はどれほどのことをしているのかと。 さいごに0才から1才の健常児の家「コムクワン」に行ってみた。 階段を上がって左側が、新生児と数ヶ月の乳児のいる部屋。何人か顔見知りの子がいる。「約束」に書いた男児もいた。お母さんそっくりのハンサム君。丸々と太り大人しく寝ていた。 母親の面会は正式には一ヶ月に一度しか許されていないが、職員のいない週末には彼らの目を盗んで来ていたのが、この2週間ほど姿を見せていないと聞いた。 ここにも一人泣き続けている子どもがいた。昨日連れてこられたという4ヶ月の乳児。彼の泣き声は本能的な悲しみに聞こえる。それは聞くものの胸をかきむしる。 きょう会いたかったのはウンセン。2ヶ月前に見たときは、やっと歩けるようになったが、彼女自身も歩けることに興奮しているのか、数歩前に踏み出したかと思うとドシンとしりもちをついてしまうころであった。彼女も生後6ヶ月ぐらいまでは、病院の常連の一人だったが、最近はトントご無沙汰である。 私がVホームでボランティアをしたのは1年数ヶ月前。その頃に面倒を看た新生児たちはウンセンも含めて歩けるころである。彼らのいるプレイルームに入り感動した。その子たちが全員チャンと歩いていた。目のくりくりと大きなアヌワット、ウンセン、ワンダー。みなお猿さんのようだったのに。 一人にでもつかまると果てしない肉体労働となる。「抱っこ、抱っこ」から始まり、汽車ぽっぽ、ブルンブルン(分からないですよね)。いや疲れます。 この子たちも、きれいとはいいがたい外見だったが、順調に生育しているのが分かり一安心。 Vホームの家々を訪問し終わったのはもう4時半。広い敷地を正面門まで歩くのはなー、と思っていたら、帰宅途中の保母さんがオートバイを停めて待っていてくれた。 「これからビールでもどう?」。 ありがたい誘いをお断りして、病院に向かう。 ガーンがいつものベッドに寝かされ、酸素吸入のチューブと点滴に繋がれていた。たった1週間前に見送った時は、もう病抜けしたのかと思っていたのだが。 ベンの姿が見当たらないので聞くと、先週と同じ外国人ボランティアが見舞いに来て、散歩に出かけたということだった。「散歩?それじゃやっぱり頭の手術?」。やはり疑問はハッキリしておかなければ、と看護師に聞いてみた。 「手術したのは大腿部の腫瘍だよ」。 免疫力が弱いので、そういった皮膚病に曝されやすい。 戻ってきたベンに、「足の腫瘍ってどのくらい?」と聞くと。両手で大きな丸を作る。 「エー!そんなに大きかったらまだ歩けないでしょ」と言うとどんどん小さくなって、直径3cmぐらいになった。可愛い。 詰め所の前に置かれた移動式のベッドに新生児が寝かされていた。水頭症。 「親は?」。 「分からない」、と看護助手。 完全休日は今回も一日で終わった。
by karihaha
| 2005-03-21 01:17
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Comments(1)
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pirimiso at 2005-03-21 23:54
ベンちゃんのしぐさ、かわいいですね。
きっと、まじめな眼差しでじっとkarihahaさんの 目を見つめてたんだろうなーーーーー。 おっっと!チェンマイに瞬間トリップしちゃいました・・・。
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