私がVホームの友人を待っていたのは、児童養護施設の敷地を入ってすぐ、「少年の家」の食堂の前だった。
夕刻5時半、音楽が鳴った。夕食の時間の合図だった。
少年たちが建物から出てきて、座っていたテントのほうへ向かってくる。
就学期6才から18才までの少年たちが、一列になり目の前を通り過ぎる。病院で知り合った子どもたちの姿を捜していると、何人か元気そうな顔で挨拶してくれた。
アルミの配膳皿を持った子どもたちは、それに今夜の夕食、焼飯を載せてもらう順番を待っている。
総勢100人以上の少年たちが、思い思いの場所で食べ始めた。会話はあまりない。ただ「食べる」という行為が粛々と行われている。
起床から就寝まで、ベルと順番とかけ声で管理される子どもたち。肉親に見守られることなく、全ての行動を一人、あるいは集団の一員としてこなしていく日々。
この少年たちが「家族」の温かみに触れることはもうないだろう。自分の家庭を築くまでは。
養子縁組・海外・里親。この現実からのそういった「突破口」は6才位までの子どもに限られている。
彼らは「選洩れ」なのだ。
そういった子どもの精神的ケアなどは、望むべくもない。ムチのような細い棒を振り回している職員からは。
私が目にしている光景は、確かな現実。そして、その残酷さも…