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アーム (1)

アーム (1)_c0071527_11153960.jpg  久しぶりのジョンからのメールには、アームが来週には母親に引き取られる。その前に会いたければ、指定された場所どこへでも連れて行くとあった。

 彼とは約半年ほど前の、保母さんの一件以来あまりしっくりとはいっていないが、こんな風な気の使い方をしてくれることには、素直にその友情を感じることが出来る。


 返礼というわけではないが、ジョンはジョンで久しぶりにテンに会いたいだろうと、私の‘陣地’も提供することにし、テンのいる病棟で落ち合うことにした。

 ジョンの腕に抱かれてきたアームは、降ろされるとしばしのためらいのあと、歩き出した。ほんの3日前には2.3歩だったらしいのだが、今日は、バランスを取るように両手を広げ、小さなお尻をふりながら、思いのままの方向へ突進している。

 反対に、クワンは、ジョンの言によると、毎日のように発育教室に通っているにも関わらず、あまり進歩がないらしい。

 クワン1歳8ヶ月。座位は取れるが、放っておくとそのまま前へ倒れてしまう。歩行はおろか、発声もできない。アーム (1)_c0071527_11162444.jpg


 私の『特別な子』たちの一人であるアームが引き取られることになった経緯は、母親の意思ではなく、ジョンが要請してのことと分かった、

 歩き出したアームと、脳性小児麻痺という、思いがけない病気を抱えていることが分かったクワンの、過度な育児の負担の大きさに耐え切れなくなったからとのことだった。

 12月に引き取ることで合意してはいたが、少し早い目の『ギブアップ』だった。

 
 色々と文句を言ってみたりはするが、ことこの件に関しては、ジョンは本当によくやったと思う。

 Vホームに、「養子に出すか、今すぐ引き取る」という選択を迫られた母親の苦境に手を差し伸べ、大学を卒業するまで面倒をみることで合意したのだが、この7ヶ月間で、母親が尋ねてきたのはたったの7回、それも1,2時間という預けっぱなし状態であった。

 母親と共同で育児をするつもりだったジョンには、これは大きな誤算だった。夜中に金切り声で泣き喚かれたり、下痢の世話をしたりする日々を重ねる中で、母親に‘呪い’の言葉をかけても不思議ではないと思う。


 引き取りの話し合いの席で、無理ならば準備が出来るまで、他の外国人の里親を見つける、あるいは養子縁組の手続きをしても良いと申し出たそうだが、どれも断り、自分が育てると言ったそうだ。

 今後は再婚した母親(アームの祖母)の家に移り住み、皆で育てるという。

 『そういうことなら、もっと早くせえよ(影の声)』


 自分が育ててみて初めてジョンの苦労が分かるだろう。ミルク、衣服、紙おむつ、全ての費用を負担し育て、引き取られたあとの6ヶ月間は、育児費の補助をしようという彼の優しさが。
by karihaha | 2005-11-04 11:16 | ブログ | Comments(0)
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