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小児病棟から(147) 母子(2)

 母子が退院して1週間も経ったころ、あの若い母親から電話があった。

 「やっぱりAホームに預かってもらえるかどうか聞いてくれませんか?」と言う。「お父さんが許したの? どんな状況でも家族と一緒に居るのが一番なんだよ」と諭したが、父親の体調が悪く、また他の家族の扶養のこともあり、預けるのを勧められたと悲しげな声で言った。


 退院時に見た父親はまだ40歳ぐらい。固太りで、色黒。たったの1週間で具合がわるくなるとは、少なくともあの外見からは想像が出来ない。そんな嘘を平気でつく、あのアームの母親のようなタイプの人間と付き合うのは懲りている。

 しかし女児は呼吸補助及び吸痰のためにのどに穴を開け、器具をつけているため、万一のことを考えれば、病院にアクセスが容易な場所にいる方が良い。なにしろいま彼女たちがいる場所、つまり両親の家はチェンマイ市内から40kmほど北へ行き、幹線道路から山へ入り、車で2時間も登った場所にある。その事実が重い腰を上げさせた。

 ジョンに事情を説明し、Aホームのマネージャーに相談してもらえるようにお願いした。ジョンとAホームのスタッフは同じ教会に通っている仲間だから、毎週日曜には顔をあわせている。

 S病院に4ヶ月間も入院していたという病歴があること、1年間という短期が希望であることが障害になるかもしれないという危惧があった。


 それに対するAホームの返事は、いずれにしろ一度Vホームに入り、Vホームから預かるという方法が本来のルートだということだった。

 セームの件で苦い思いをしている私は、そのままVホームに入れてしまうのではなく、一度Aホームのマネージャーに直接会ってもらいたいとさらに食い下がった。その上で、いわゆる『ひも付き』状態で、AホームからVホームに紹介してもらえれば、Aホームに預かってもらえる可能性がより高くなる。

 
 ジョンの交渉のお陰で、「それでは一度会ってみましょう」という返事が貰えた。
by karihaha | 2005-12-07 23:29 | 小児病棟から | Comments(0)
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