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小児病棟から(187) テレパシー

 S病院からN県立病院に回ることにした。普段なら『かけもち』などしないのだが、ICUに入っている、あの双子のような男児たちのうち、ノーンタキンの容態が気になって。

 昨日の段階では、最高血圧50、最低血圧22と悪化の一途をたどっていた。私が入室すると、いつも容態や治療方針を説明してくれる看護師が、「起きていると疲れさせるので、薬で眠らせている」と暗い顔で言った。


 今日も部屋に入るなり、両手の親指を下に向けるジェスチャーをした。一日3回血圧を上げるための注射をするのだが、40~50に終始しているのだと。その時頭に刺した針から、注射液が入れられた。テンに限らずどんな子どもでも泣き喚くほど痛いその処置にも無反応。

 丁度2人の入浴時間になった。人工呼吸器を口に入れたままの清拭。ベッドにビニールが敷かれ、身体が洗われる。もう一人のカンタポンは、回復の兆しを見せているとのことで、薄目を開け、泣くしぐさをした。一方のノーンタキンは、お人形のようにされるがまま。

 病棟ではいつも子どもたちにお風呂をつかわせている私でも、これほど物々しい器械に囲まれている彼らには手がだせず、ただ遠巻きに見守るのみ。もう少し症状が軽ければ、「少し抱かせて」と言えるのに…。

 
 お風呂が終わり、器械類に再びスイッチが入れられる。脈拍、心電図と次々にモニターに数値が出てくる。そして血圧が出た。なんと、108/80となっている。何かの間違いでは、ということでもう一度やり直し。皆が注目する中で出たあらたな数値は、85/39。

 「O.K.!!」

 看護師が声を揃えて言った。薬が効きだしたのだ。

 「M、ずっと側にいてあげて!」と一人の看護師の弾んだ声。本当にそんなことで彼が回復するのなら…。

 
 『がんばれ、がんばれ、がんばれ!!』

 離れているけど、テレパシーを信じているよ。
by karihaha | 2006-04-07 00:58 | 小児病棟から | Comments(0)
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