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小児病棟から(189) 命

 集中治療室のドアをソーッと開ける。正午からの面会時間にはまだしばらくある。でも、ノーンタキンやカンタポンの姿が見えればそれでよい。

 
 ベッドNo.3に人影はなかった。

 「やっぱり」

 思わずそのまま入室してしまう。分かっていることを確認するために。

 ノーンタキンはきょう4月8日午前1時に息をひきとったのだそうだ。

 昨日の時点でこのことはもう分かっていた。午後5時過ぎ、もう一度様子を見ようと入ったICUの彼のモニターは、刻々と死が近づいていることを告げていた。閉じられた瞼を押し開けてももう反応はなかった。

 死因: 急性肺炎
 享年3ヶ月

 縁があって彼の短かすぎる人生の最期を看取った。親も生まれた環境も分からない。ただ彼が確かに‘在った’。彼が選んだその証人が私だったのかもしれない。


 彼の小さな遺体は合同火葬場に運ばれ、見送る人もないまま物理的にもこの世から姿を‘消す’。そんな命だった…。
by karihaha | 2006-04-09 00:48 | 小児病棟から | Comments(0)
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