集中治療室のドアをソーッと開ける。正午からの面会時間にはまだしばらくある。でも、ノーンタキンやカンタポンの姿が見えればそれでよい。
ベッドNo.3に人影はなかった。
「やっぱり」
思わずそのまま入室してしまう。分かっていることを確認するために。
ノーンタキンはきょう4月8日午前1時に息をひきとったのだそうだ。
昨日の時点でこのことはもう分かっていた。午後5時過ぎ、もう一度様子を見ようと入ったICUの彼のモニターは、刻々と死が近づいていることを告げていた。閉じられた瞼を押し開けてももう反応はなかった。
死因: 急性肺炎
享年3ヶ月
縁があって彼の短かすぎる人生の最期を看取った。親も生まれた環境も分からない。ただ彼が確かに‘在った’。彼が選んだその証人が私だったのかもしれない。
彼の小さな遺体は合同火葬場に運ばれ、見送る人もないまま物理的にもこの世から姿を‘消す’。そんな命だった…。