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小児病棟から(1) メー

 メー、1才2ヶ月。酸素吸入の透明な箱に頭だけをいれた彼女は、魚のように口をパクパクとあけ、息を吸い込んでいた。

 ロップブリで何人もの人々の最期を看取ったことはあるが、大人の場合は一様にあごを大きくあげ、空気を一気に身体に取り込むような動きのため、それが子供にも当てはまるとばかり思っていた。しかし、メーのそれは、口を丸く開け小さく吸い込んでいるだけ。その姿は可愛くさえ思えた。

 しばらくして、Aホームの保母が「メーが逝ったと思うけど、確認してみて」と言いに来た。そばに行くと、確かに顔の表情が違う。目をしっかりつぶり、生気を感じられなかった。

 ロップブリでもそうだったが、素人の私が判断するのは躊躇われる。看護婦を呼び確認してもらうことにした。集まった看護婦の一人が彼女を少し揺り動かし、そのあと脈をとった。そして、「亡くなっている」と宣言した。その瞬間だけ少し空気が動いたような気がした。

 メー、そんな風に静かな最期を見せてくれてありがとう。わたしは多分、今日初めて肩肘張らずに、「あなたは逝った方が良かったよ」と思えました。それは、あなたが長いあいだ病気との苦しい闘いをし、Aホームの人々も最善を尽くしてあなたを守ろうとしていたのを証人として見ていたからです。

 でも私たちのこの身体は永遠のものではないのです。あなたの場合は運命的にHIVという菌が入ったために苦しく短い物でした。きっと、もっともっと生きたかったでしょうね。今は安らかに眠ってください。色々な課題があるのは分かっています。あなたやティンナポップの存在、それは今後私たち残されたものが受け継いで風化させぬよう学び伝えることです
by karihaha | 2005-03-04 20:41 | 小児病棟から | Comments(0)
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