2005年 08月 30日 ( 1 )

小児病棟から(110) 涙

 ためらいながらも、久しぶりにN県立病院に行ってみることにした。

 実は昨日S病院のエレベーターホールでVホームの職員2人にバッタリ。初めて見た2.3歳の女の子の手をひき、レントゲン室へ向かうところだった。

 その子は足を少し引きずっていた。整形外科の手術が必要かもしれない。

 「もしもここに入院したら、メーが面倒を看てあげるからね」と言うと、コックリ小さな頭を振った。

 「Vホームの子全員をここに連れてきてやろうかしら」と、暇な私は思う。

 いつも気になっていたN県立病院の様子を聞く絶好のチャンス! すると、ビクタージュニアがICUにいるとのことだった。


 12時からの面会時間に合わせ、覗いたICUにはジュニアの姿はなく、すでに病棟に上がったあとだった。

 「どうしよう」

 病棟に上がるのを躊躇う理由は、先日のM女史との一件が‘職場’に微妙に影響しているのではないか、という危惧以外にも、もう一つある。

 テンがCTスキャンを受けた日、私がつかの間の帰宅をしている間、おばが一階に下りたとき、N病院のチーフナースと遭遇したらしい。

 S病院にいる理由を問われ、テンの入院を告げたという。

 タイミングが悪すぎる。その看護師は、N病院での再手術をすべきかどうかという時、おばが最後に相談を持ちかけ、それがきっかけで断る決断をした人だった。

 本人にすれば、せっかく親切に相談に乗ったのに、「気分わるー」と言うところだろう。

 私もそれ以来ぷっつり姿を現さないとなれば、「共犯」と取られても仕方がない。


 折角来たのだから、とやっぱり病棟に上がることにした。テンに関する私の‘身の潔白’や、病院に来なかった直接的原因は、テンのことではなく、彼らが知る由もない、Vホームとセームの問題だということを説明しよう。

 部屋には、ジュニアに並んでセーム。そして向かいのベッドにはこれも付き添いのない、女児が横たわっていた。

 看護師チアップが、テンの様子を聞く。やっぱり事情は知れ渡っているのだ。

 用意していた‘言い訳’がなんだかバカらしくなり、「うん、今は大丈夫」とだけ伝える。

 チアップだけには病院から足が遠のいている本当の理由を言おう。最初にセームの家庭事情や住所などを教えてくれたのは彼女なのだから。

 説明するうちに、涙が出てきた。聞き終わったチアップも、「何てひどい人。自分の権力を誇示したいだけで、子どものことなんか少しも考えていない」と静かに言った。

 
 ゲームは発熱が続いているようだが、見たところ緊急事態ではないと思えた。ジュニアは思ったより元気で、ガラガラとおもちゃを振り回しながら体調の良さを楽しんでいるようだった。

 重症なのは、やっぱりテンの方。つかの間の再会だったが、また来るからねと病院をあとにした。
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by karihaha | 2005-08-30 11:50 | 小児病棟から | Comments(2)