2005年 09月 09日 ( 1 )

子どもたち

「2カ国」 ↓
c0071527_11505886.jpg 病棟にゲームの姿はなかった。では、約束どおり母親が来たんだ。

 看護師や助手、目が合うたびに、「ゲームはS病院へ行ったよ」と言ってくれる。

 「うん。それで母親は付き添うって言ってるの?」

 「忙しいから」といつもの台詞を残してS病院へ向かうゲームと一緒に去っていったそうだ。

 「ゲームは、母親の顔を見ても全然分からなくて」と看護助手。

 それはそうだろう。彼、1歳2ヶ月。その間に母親と接触したのはホンの2週間ほどなのだから。それを埋めるように面倒を看てきたスタッフにとっては、少し溜飲をさげるような出来事だったろう。

 
 「2カ国」。彼と接するにつれ、泣くという行為はコミュニケーションの手段だというのが実感できる。

 お腹がすいた。眠い。おしめが濡れている。

 その都度、律儀に泣いてくれる。そして泣いている原因を取り払うと、眠るか、一人で遊んでいる。

 男前ちゃんでもある2カ国は、今日も絶大な人気で看護師たちの心を惑わしている。私も‘惚れて’しまった一人です。


 ダムについて知ったこと。彼女は心臓病であると同時にHIV感染者でもあるということ。祖母が連れてきてすぐ、一日だけ家に帰ってくると言いながら、3日目の今日も姿を見せていない。

 ダムにはあと2人兄弟がいるが、ダムを含めて3人全員を祖母が面倒を看ている。両親は出稼ぎに行っているらしいが、これはタイでは珍しくもない話。


 栄養失調の女児、パックは今日もベッドに横たわったまま身動きもせず、言葉も全く出ない。ビタミン不足で悪化してしまった足首の傷の包帯を換えるときも、うめき声一つもらさない。

 後頭部は地肌が見え、髪の毛が抜け落ちている。ということは、ずいぶん長い間寝かされっぱなしだったのだろう。

 新聞や人の話で知ったこと。障害者によっては、「檻」のようなところに入れられたり、家に閉じ込められたまま、家畜のような生活を強いられているところを、近所の人や、NGOに助けられたというケースがあるらしい。パックも似たような状況に置かれていたのだろうか。

 身体の状態は、序々に快方に向かっている。真っ黒だった皮膚が剥け、その下から現れた肌がつるつると光っている。
 
 しかし、快方して帰宅すれば、またもとのもくあみになるのは明らか。病院は身体を治すところ。彼女のようなケースこそ、社会福祉士やカウンセラーの力を借りなければ解決出来ないのではないかと思っている。

 
 毎日のように出会うあどけない子どもたち。家族の一員であり、社会の一員であるはずの彼らは、いまは、「大人の都合」、「社会の都合」でその恩恵に浴していない。

 一人一人が見せる自然な可愛さとはうらはらな、そんな厳しい現実に対処するには、個々人の‘現実’に向きあう必要がある。

 なんて遠い道のり。なんて深い人間の業。
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by karihaha | 2005-09-09 11:56 | 小児病棟から | Comments(0)