2006年 02月 27日 ( 1 )

『政府の子』

 少女が冬のドイツに旅立った。ヨーロッパでも指折りの整形外科医に手術をしてもらうために。

 10才のその少女は生まれつき顔が他の子どもたちとは違っている。目の位置、口の角度、鼻の高さ。。。 その上身体にはもう一つ厄介なものが棲みついている。HIVウイルス。

 彼女がVホームに預けられたのは、顔が原因だったのか、それともHIVウイルスのせいか。

 2才になったころ‘お母さん’がVホームにやってきた。そして他の子どもたちとは違う部屋に押し込まれていた少女と出会った。‘お母さん’にためらいはなかった。すぐに自分のホームに彼女を連れて行き、他の子どもたちと同じように育てだした。

 それから8年間。‘お母さん’は彼女を色んな整形外科に連れていった。少女はタイ人の医者から何度も手術を受けたのだが…


 Aホームにいる彼女とマネージャーに朗報が入ったのは去年の秋だった。当地で同じくHIV感染児の施設を開いているマネージャーの紹介で、ドイツのある病院で無料で手術をしてもらえることになった。航空券も寄付された。

 少女とマネージャ2人の滞在費をサポートするための募金活動が行われた。ジョンや私の知人を始め、多くの人が賛同しすぐに目標額を達成した。

 あとは渡航を待つばかりとなったある日、マネージャーがVホームに報告に行った。Vホームの子どもは他の施設で暮らそうが、里親に育てられようが『政府の子』というステータスには変りがない。責任者は子どもに関するあらゆる動静を報告する義務がある。

 「『政府の子』が海外に行く場合は、Vホームの職員が同道しなければならない」。もう一つの不文律が問題となった。

 少女は‘お母さん’のもとでもう8年間も暮らしている。すべての手配は‘お母さん’がした。でも、『政府の子は政府の子』というVホームのM女史。女史の主張は、Vホームの看護師が同道すべきというものだった。

 「あなた(‘お母さん’)は看護師ではないでしょ」と言うM女史の主張が通り、少女とは一面識もなかった看護師が同道することになった。募金額は2人分、少女と看護師のために使われることになった。 


 Vホームの子どもは誰一人として『政府の子』になりたくてなったわけではない。そんな『生身の子』が見も知らぬ海外に行く、そして手術を受ける。そんなときにも‘お母さん’に優先して、子どもたちがあずかりしらぬ‘身分’がつきまとう。
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by karihaha | 2006-02-27 11:56 | ブログ | Comments(0)